手順と様式の概要

ここでは、復職名人の手順と様式の概要ついて説明します。

なぜ手順と様式が重要か

原理原則を、目の前で発生している事案に合わせて考えていると、対応が後手に回り、混乱してしまいます。そのため、考えなくても自動的に結論が出る、仕組みに落とし込んで対応することが重要です。
また、以下のようなメリットがありますので、手順と様式による運用をお勧めしています。

1.書類を通したやり取りにより、本人との程よい距離感を保つことができる

従来のやり取りは、担当者による電話対応が行われるなど、距離感が近すぎる例もあれば、電話連絡がなかなかつかず、あるいはクレームが寄せられるなど、距離感が遠すぎる例もあったのではないでしょうか。この点、書類を通した、多少形式的なやり取りにすることで、程よい距離感につながります。

2.対応を担当者や各拠点に任せられる

書類とマニュアルを通したやり取りになりますので、基本的な対応は担当者レベルや各拠点に任せられます。従来のようにメンタル対応=難しい問題だから、課長や部長専権事項といった状態から、担当者の作業レベルにまで落とし込むことができます。

3.どの社員に対しても、制度に則った公平な対応ができる

優秀な社員に対しては手厚い対応、場合によっては本人の希望を踏まえた対応を行い、優秀でない社員に対しては、制度をより厳しく適用し、場合によっては辞めさせようとする、といった対応を取る人事担当者は多いです。しかしながら、それは新たな問題を生み出しかねません。制度を整備することにより、社員の属性によらず、公平な対応をすることが可能となり、結果的に問題発生を防ぐことにつながります。

手順と様式の概要

療養の流れのイメージとしては、「復職支援の手引き」における、第2ステップ「主治医による職場復帰可能の判断」と、第3ステップ「職場復帰の可否の判断」を入れ替えたものです。あくまでも復帰可能という意見を聴取する前に、本人に復帰の準備をしっかりと行わせ、会社がそれを判断するということです。

療養の流れ

  概要 手続き・様式
療養開始時 第一原則、第二原則により、療養開始 療養申請+診断書など
療養専念期 主治医の指示に従って療養に専念する期間 療養・復帰準備状況報告書
(療養段階確認シート)
復帰準備期 復帰基準を満たすように復帰準備を進める期間 療養・復帰準備状況報告書
復帰判定予備面接 復帰準備が完了したことを確認するための面接 復帰準備完了確認シート
復帰検討期 復帰基準を満たしているか具体的に判断する期間 療養・復帰準備状況報告書
復帰申請+主治医意見書
復帰支援期 復帰後、定められた配慮を行う期間 業務管理票・労務管理票

療養開始時

療養を開始するための手続きと、今後の療養に関する説明を行います。合わせて早めのタイミングで、主治医に対して復帰基準を通知します。

療養専念期

主治医の指示に従って療養に専念する期間。従来の療養期間に相当します。生活リズムを整え、体力を回復することを主な目的とし、少なくとも1カ月間を想定します。
 なお、療養開始時点から復帰するまでの間は、次節で「療養・復帰準備状況報告書」の提出を毎週求めます。この報告書が少なくとも4週連続、期日を守り、かつ内容を伴った提出ができた時点で、次の復帰準備期へ移行したと判断します。

復帰準備期

復帰基準を満たせるように、復帰準備を進める期間。復帰基準で説明した通り、復帰時点から通常勤務をさせることになるので、この段階は極めて重要です。通常は1カ月以上を想定します。
 従来は復帰基準のハードルを労働契約で求められる水準以下に「下げて」、本人の「希望」に基づきあまりにも早期に復帰を認めてきたと言えます。例えば、「病状が一定程度安定し、生活リズムが整い、日常生活は滞りなく送れ、体力づくりができ、職場に出勤くらいはできる段階」、いわば治療が一段落した水準で、軽減勤務を行いつつ、復帰させていたのではないでしょうか。しかし本来職場で求められるのは、完全な労務提供です。つまり、職場に出勤するだけでは不十分で、定時勤務を、業務の質を伴った形で行わなければなりません。そのため、復帰準備期において、一般的な治療のゴールに到達した水準から、完全な労務提供ができる水準になるまで、復帰に向けた準備を進めます。
 なお、復帰準備は会社から具体的に指示するのではなく、本人に主体的に必要な準備を考えさせて、報告させます。会社としては、本人からの復帰準備が完了したという申し出や報告に基づき、休職事由が消滅したかどうかを、責任をもって判断すれば良いということです。

復帰判定予備面接期

復帰準備が完了したと共通認識に至った時点で、「復帰準備完了確認シート」の提出を求めます。シートの内容に問題がなくなった状態で、復帰判定予備面接を実施します。
 この面接では、「療養・復帰準備状況報告書」や「復帰準備完了確認シート」の内容に基づき、復帰基準の内、業務基準・労務基準を満たせるかどうかを確認します。これらの基準について、主治医や産業医といった医者に尋ねるのではなく、人事や上司が主体的に判断することが重要です。従来とは違って、判断材料もしっかりとそろっているはずなので、自信をもって判断できます。
 なお、この段階までは書面によるやり取りが中心です。そのため、まだ復帰準備が完了していないにもかかわらず、本人が多少背伸びして、復帰準備が完了したと意思表示すること自体は可能です。その一方で書面上の本人の報告だけをもって、会社として復帰準備が完了したと簡単に判断してしまうわけにはいきません。そのため、この復帰判定予備面接において、本人が提出してきた書類を基に、さらに具体的な質問を行い、復帰準備が完了したことの評価や、懸念点の払拭を目指します。
 予備面接にて、復帰準備が完了し、業務基準及び労務基準において復帰基準を満たせそうだと判断できた場合、次の復帰検討期へ移行します。もし復帰準備が完了していると判断できなかった場合には、復帰準備を継続させ、しばらく経った後に、再度面接を実施します。

復帰検討期

復帰基準を満たしていることを慎重に具体的に判断する期間。手順通りに順調に進めれば、2週間程度です。
 この段階では、主治医および産業医による健康基準に対する意見を取得し、最終的に復帰判定を行います。なお、主治医の意見については、「主治医意見書」の様式を用います。
 このステップで復帰可能だと判断した後は、いよいよ復帰することになるが、その際に重要となるのは、いわゆる「ストップ要件」と呼んでいる、再療養の条件を定めておくことです。復帰後に原疾患の再増悪が否定できない状況になった場合に、速やかに再療養するための条件を設定し、関係者間で約束しておきます。

<ストップ要件>
 復帰後の任意の1ヶ月間に、原疾患に起因することが否定できない遅刻・早退・欠勤、および当日連絡による休暇取得の申し出や、あるいは、上司の通常の労務管理での指揮命令が困難であると判断されるケースが、合わせて3回以上あった場合は、速やかに再療養を命じる。

 なお、復帰日については、祝日がある週の前週の水・木曜日とします。この日に復帰した場合、第一週は2~3日勤務、第二週は祝日があって4日勤務となり、第三週からはじめて週5日勤務を開始することになります。確かに初日からフルタイム勤務をさせることに変わりありませんが、一方で、あくまでほかの従業員と同じく、通常の労務管理の範疇において、段階的な負荷となるように、このような復帰日の配慮をおすすめしています。

復帰支援期

復帰後に定められた配慮を、定められた期間行います。なお、配慮が解除できない場合には、通常勤務とは言えないので、再療養となります。
 基本的には時間外労働の免除に加えて、通院への配慮を1か月間実施します。通院への配慮とは、本来は日中の通院が必要で有給休暇を取得する場合、業務遂行に支障が出ないように、引継ぎ等を行わなければなりません。しかし、その引継ぎを遠慮してしまい、適切な通院への妨げとなってはいけません。そのため当初1か月間は、引継ぎについては上司がフォローし、遠慮なく通院できる環境を整えるという配慮を行います。
 時間外労働の免除は、復帰後1か月間は産業医学的配慮として、0にします。2カ月目からは、産業医学的配慮は解除されますが、上司による労務管理の一環で、段階的に戻していきます。3カ月目にはほかの社員と同水準の時間外労働を命じます。
 なお、一般的に行われている、復職後の産業医による定期的な面接は、必要ありません。産業医による面接が必要な状態は、通常勤務状態とは言い難いからです。復帰後に産業医面接が必要な場面とは、再療養の説得のための状況のみです。

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