対応例

ここでは、復職名人での対応例についてご紹介します。

1.療養導入、療養専念期

(1)部署異動後に業務遂行レベルが低下

Fさんは営業職の若手社員。経理部から営業部へ異動(1/1付)となった。異動後、1か月もたたないうちから、メールの誤送信といった初歩的なミスが多く見られるようになり、以前の部署では認められていなかった遅刻も、2,3回、発生していた。
 ある日(5/9)、Fさんは無断で欠勤をはじめ、後日診断書が郵送で送られてきた。診断書には「病名:うつ病 2週間の加療を要す」と書かれていた。すぐに、本人に電話するも連絡がつかず、仕方なく入社時に緊急時連絡先で取得していたご両親に連絡して、会社へ来てもらって面接をする約束を取り付けた。

(2)両親との面接実施

面接の場にはご両親だけが来られた。人事担当者からは、療養の手続きの話として、以下の4点を重点的に伝えた。

  1. 会社の療養手順や復職基準など(特に、原職復職であること、復職時の軽減勤務はないことを明確に)
  2. 会社の指定の手順を踏まなければ、仮に復職可能という診断書が出ても直ちには復職できないこと
  3. これまでの当社における対応経験からは、3か月前後の療養期間が多いこと、また2週間程度の短期での復職を安易に認めても、再療養となる事例が少なくないことから、復職を焦らず、長期的な視点で療養に専念してほしいこと
  4. 療養申請書、および週一回の療養・復帰準備状況報告書を提出すること(療養当初に、本人の負担になるようであれば、ご家族代理で報告してほしいこと、療養報告は復職意思があると会社が判断するための重要な手続きであること)

なお、本人は一人暮らしをしており、実家には帰りたがらないため、ときどき母親が世話をしに行く形で対応していることが分かった。人事担当者からは、会社としては一人暮らしでの療養は勧めておらず、実家での療養を勧めることを伝えた。ただし、主治医とも相談のうえ、安否確認については、ご家族が責任をもつということで、一人暮らしでの療養をすることは差し支えないことも伝えた(平たくいえば、会社の方で、療養期間中の安否確認についてまでは、サポートしかねることを説明した)。
 また母親からは「どうも新しい仕事に慣れなかったみたいで、復職時には以前の部署に戻してもらうような配慮ができないのでしょうか」との質問があった。人事担当者は、「先ほどご説明した通り、原職復職が原則になります」とあらためて説明をした。母親は納得がいかない様子であったが、父親が「その話は今しなくても良い」と切り上げた。

(3)療養の開始

面接翌日に早速療養申請書の提出があり、Fさんの療養が開始した。
 面接後しばらくは、親による療養・復職準備状況報告書の代理提出が続いていた(5/20~6/3の3回分)。1か月ほど経過した6/10から本人からの報告が出てきた。当初は、「記述内容は免除」であり、その後も、治療内容に関する記述(書類1.1)が中心で、会社としては、少なくとも復職準備を含め、就労可能な状態にないとの判断にもとづき、毎週受領書(書類1.2)を発行して、その中で療養継続を指示することを伝えていた。

■書類1.1 本人報告による療養・復職準備状況報告書

※冒頭のチェックや、前回報告時より改善した点の記載が抜けているが、療養専念期なので、軽く指摘するにとどめる

■書類1.2 書類1.1に対する受領書


(5)復職準備期への移行

療養開始後、3ヶ月ほど経過した時点で、内容を伴った療養・復職準備状況報告書(書類1.4)が4週以上連続で続き、なおかつ本人の考えとしても「復職準備」にチェックが入った報告となったため、復職準備期へ移行したと判断し、本人へ電話にて連絡して、復職準備に関する説明を行うこととした。
 なお、元の経理部門への異動が望ましいと主治医の先生がおっしゃっているというようなことを匂わせる記述が報告書にあったので、あらためて原職復職であるという復職基準を含めた受領書(書類1.3)を選択し、その後4回、文面は変えずに伝えている。

■書類1.3復職基準を伝える受領書

■書類1.4復職準備期へ移行したと判断した報告書

※すでに7/1付報告から5回連続で提出され、かつ「復職準備を行っています~」にチェックが入ったため、復職準備期へ移行したと判断した。

2. 復職準備期

(1)復職準備説明の実施

8/3に復職準備説明のための面接を実施し、復職準備説明書を基に今後の一連の復職手順を説明した。本人からは復職基準に関する再確認(特に原職復職の部分)があったが、当初より一貫して伝えていたとおり、原職復職であることを再度伝えた。
 翌週から復職準備状況を記述していると評価できる療養・復職準備状況報告書報告書(書類2.1)が提出されてきた。しかし、内容としては復職準備期初期にありがちなもの(生活リズムを整える、ジム、図書館)で、実際に、療養前に対応できなかった業務に対して業務遂行であることを判断できるような内容とは言えず、具体性にもかけるため、その旨を受領書(書類2.2)にて指摘して、返送を続けた。

■書類2.1 復職準備期初期の報告書

※これでは具体的に何の準備をしているか分からない。分かりやすく言えば、この報告が続いて、後日復職準備の完了を判断しようとしても、仕事の準備が完了したという判断材料には一切ならない。

■書類2.2 書類2.1に対する受領書

(2)復職準備の継続

その後は一定程度具体的な準備(図書館で、従来は異動後の慣れなさの中でおざなりになっていた、顧客先業界の動向について勉強している、営業としてのスキルを勉強しているなど)を継続しているとの報告内容であったが、営業先で、自社製品に対する知識のなさを指摘されたこともひとつのきっかけであったことに対する対処については、言及がなく、物足りない復職準備状況であると判断せざるをえない報告がその後もしばらく続いていた。
 復職準備期が1ヶ月経過した辺りで、「そろそろ復職したいと考えている」に○が付いた報告書(書類2.3)が提出されたため、受領書(書類2.4)にて復職準備完了確認シートの提出を指示した。翌週に提出された復職準備完了確認シート(書類2.5)では一部項目(対処行動:問題が発生した時に自己努力をした上で、上司や同僚に助言・指導を求め、問題を解決することができる。適切な自己主張:依頼されたことに対して、相手との関係性を損なうことなく、自発的に自分の考えや気持ちを表現しながら断ることができる等)について、最上位に○がつかなかったため、「まだ予備面接を行える段階にはないので、復職準備を継続するように」と電話にて指示した。加えて、営業職にて課題となっていた、自社製品に対する知識の取得について指摘したところ、「その点は自分でもわかっていたが、振り返ると少し精神状態が不安になるので、避けていた」との回答があった。

■書類2.3 「そろそろ復職を検討したい」に○がついた報告書

■書類2.4 書類2.3への受領書

■書類2.5 1回目の復職準備完了確認シート

※Ⅲ.仕事に関係すること(5)役割行動、(6)対処行動、(7)適切な自己主張が2に○がついているため、不十分

(3)復職判定予備面接の実施決定

2週間後(9/9)に、療養・復職準備状況報告書(書類2.6)と合わせて全て最上位に○がつく復職準備完了確認シートが提出されたため、復職判定予備面接の実施を決定し、日程を調整した。会社側は面接実施までの間に、面接シナリオ1を準備した。なお、予備面接には家族同席も求めたところ、母親が同席するだろうとのことであった。

■書類2.6 9/9付の報告書

※内容は具体的になっているが、いまいち物足りない内容。このまま少しずつでも改善をしていけば通常勤務可能と判断できるかもしれないが、この内容にとどまった場合は難しい。

(4)1回目の復職判定予備面接の実施

面接(9/15)においては、シナリオにしたがって、まず人事担当者から本人に復職準備が完了した根拠について説明を求めた。とりわけ、1回目に提出された復職準備完了確認シート(書類2.5)で最上位に○がつかなかった項目について、具体的な説明を求めたが、言葉につまり、会社が復職検討を進めても問題ないと判断できるような回答がえられなかった。また、先に指摘済みの、自社製品に関する知識の取得については、自分でもまだ十分とは言えないとの回答であった。そのため復職検討期への移行は保留とし、復職準備の継続を指示した。
 母親からは、「どうしても、もう一度だけお尋ねしたいのですが、やはり原職復職ということで営業職としてでないといけないのでしょうか」と質問があった。人事担当者から「これまで説明してきたとおりです。現在は、原職復職を前提として復職判定をしているところです」と回答した。

■1回目の予備判定面接

1.面接の目的の確認
人事担当者:今回の面接は、Fさんご自身から「復職準備が完了した」という報告があり、復職検討を希望するという意思を表明したために開催した。面接においては、復職準備状況の確認と、復職検討期へ移行できるかどうかの判断を行う。なお、判断においては、今回の面接でのご自身の説明に加えて、これまで提出されている復職準備状況報告書や復職準備完了確認シートを基に行う。

2.復職基準の確認
復職基準については、これまで何度も伝えてきたが、特に重要なポイントなので、再度お伝えする。
 当社では復職時には、原職復帰を前提としており、軽減勤務は適用がなく、少なくとも定時内の勤務に支障がないことが求められる。時間外労働については、復職後1ヶ月間については免除するが、以降2ヶ月目については、上司の管理下において、徐々に負荷し、3ヶ月目には、他の労働者と同様に就業できることを想定している。また、通院に対する配慮として、復職後1ヶ月間については、通院のための有給休暇の取得に際して、完全な業務の申し送りまでは求めないが、2ヶ月目以降については、他の労働者と同様に、自ら適切に申し送りをした上で有給休暇を取得して受診するように、対応できることを求めている。
 これらの条件を満たして働くことができるか、業務面、勤怠面、健康面の3点から多面的に復職可否を判断する。

3.復職準備が完了した根拠について
それでは改めて、9月9日付で提出された「復職準備完了確認シート」を基に、復職準備が完了した根拠について、説明願いたい。まずは、8月19日付で提出された確認シートで最上位に○がつかなかった項目について一つずつ確認する。

①「役割行動:自分の役割を自ら適切に認識でき、自発的にそれに応じた行動がとれる」
②「対処行動:問題が発生した時に自己努力をした上で、上司や同僚に助言・指導を求め、問題を解決することができる」
③「適切な自己主張:依頼されたことに対して、相手との関係性を損なうことなく、自発的に自分の考えや気持ちを表現しながら断ることができる」
④先日指摘した、療養開始前にネックになっていた「自社製品に関する知識の取得について」準備状況はいかがか。

復職後は、療養開始前と同様の業務を命じるが、上司から見て、今日の面接やこれまでの報告内容から、業務を問題なく遂行できると判断できるか。
上司:現状では正直、判断材料も少ないと思う。また今日の本人の説明からは、業務遂行に支障がないとは判断できなかった。

4.面接の結論
人事担当者:今回の面接では、復職準備状況としては中期から後期に入っていることは確認できたが、復職準備完了とまでは判断できなかった。そのため、復職検討期への移行は保留とし、復職準備を継続することを求める。特に今回懸念となった「役割行動」「対処行動」「適切な自己主張」「自社製品に関する知識」については十分な準備を進めていただきたい。
 なお、復職準備が完了したと判断した際には、再度、復職準備完了確認シートを提出されたことをもって意思を確認し、再度面接を設定する。その際にはお手数だが、ご家族にも再度同席願いたい。

5.質疑応答

(5)2回目の復職判定予備面接実施

最初の面接から1ヶ月経過後、復職完了確認シートの提出があり、再面接の意思表示があった(10/7)(書類2.7)ため、あらためて同様に母親同席で面接(10/13)を実施。

■書類2.7 10/7付の報告書

前回懸念された箇所を事前シナリオ(面接シナリオ2)にしたがって人事担当者から重点的に指摘したところ、本人は復職準備を進めてきたこと(自己主張のトレーニングを積んできたことや、余裕を持って顧客に接する訓練をしてきたこと、自社製品の長所・短所をまとめて、友人に対して営業シミュレーションを行い、実際に一人はネットで買ってもくれたこと)を、自信を持って説明できた。引き続き、シナリオにしたがって、復職後の業務の具体的な内容に関する説明を上司から行い、具体的な内容を聞いたうえでも、本人として自信をもって、以前のように短期で再療養に至るようなことなく、安定継続的な就労が可能であるとの考えが、明確に表明されたので、復職検討期へ移行することに決めた。
 人事担当者から、母親に対して、「営業職への原職復職ということで、最終の判断の段階に進みますが、特に心配なことはないですか」と尋ねたところ、本人の方から、「営業職への復職については、前回の面接以降、父親も含めて家族でもよく話し合い、総合職なのだから、営業職もできるようにならなければならないことを十分に理解しましたので、心配ありません」と回答があった。

2回目の予備判定面接

1.面接の目的の確認
今回の面接は、Fさんご自身から10月9日時点で、再度「復職準備が完了した」という報告があり、復職検討を希望するという意思を表明したために開催した。面接においては、先日の面接に引き続き、復職準備状況の確認と、復職検討期へ移行できるかどうかの判断を行う。

2.復職準備が完了した根拠について
それでは早速、復職準備が完了した根拠について、説明願いたい。まずは9月15日に開催した面接において指摘した部分の改善について確認する。

「役割行動」:
「対処行動」:
「適切な自己主張」:
「自社製品に関する知識」:

続いて、復職後の具体的な業務について確認する。
上司:復職後は従前と同じく、A製品に関する営業を担当してもらう予定である。担当顧客は、当社の重要顧客であるB社、C社およびD社であり、療養前と変わりなく、定期的な訪問営業をしてもらう。また、担当顧客以外にも当社の展示会で良好な反応があった見込み顧客に対する新規営業も随時担当してもらう。
 なお、当然先ほど示した会社、担当業務以外にも、同僚の業務負荷や突発的な事情に応じて、他の同僚の業務を手伝ってもらうことや、臨時に新たな業務を割り振ることは想定しておいてほしい。
人事担当者:復職後の具体的な業務は以上のとおりであるが、具体的な業務内容を想定して、なお復職後に短期で再度療養に至ることがないことを、自信を持って言えるだろうか。特にB社は当社の製品性能に対する要求が厳しいことは十分承知しているが、いかがだろうか。

最後に、ご家族にも確認したい。これまで何度か、復職時の異動を希望されている様子であったが、それに対しては原職復職となることを繰返しお伝えてきた。この度、営業職への原職復職ということで、最終の判断の段階に進むが、特に心配なことはないだろうか。

3.面接の結論
(問題ない場合)今回の面接で、前回の面接で課題となっていた事項について十分な準備がなされ、なおかつ以前のように短期で再療養に至るようなことなく、安定継続的な就労が可能であるとの考えが、明確に表明された。これらの根拠は我々にとっても十分納得できるものだったので、懸念点は解消された。よって復職検討期へ移行することとする。復職検討の手順に関しては、この面接後に引き続いて行いたい。

(支障がある場合)今回の面接で、前回の面接で課題となっていた事項について準備を進めていることは確認できたが、復職に関する懸念を完全に払拭するには至らなかった。今回は復職後の具体的な想定業務もお伝えしたので、それに向けて復職準備を一層具体的に継続してほしい。なお、前回と同じく、復職準備が完了したと判断した際には、再度、復職準備完了確認シートを提出されたことをもって意思を確認し、再度面接を設定する。その際にはお手数だが、ご家族にも再度同席願いたい。

4.質疑応答

3. 復職検討期

(1)復職検討に関する書類提出

予備面接終了後、復職判定手順説明書を基に、復職申請書と主治医意見書の提出を提出するように指示し、合わせてあらかじめ確認してあった産業医面接の日程どおり2週間後に産業医面接を実施することとした。また、その後の手順の説明として、主治医意見書については、本人から記載方法の詳細な確認がその場でなされたため、重要な点として、原職復職であること、軽減勤務の対応はないことについても説明したところ、本人はこれまでこだわっていた原職復職についても、特に問題のないと考えていることが、明確に確認できた。
 1週間後には、復職申請書と主治医意見書(書類3.2)が提出され、産業医面接(10/27)でも復職に関して特に、会社と当該社員の間の予備的合意(当初労働契約通りの労務提供の再開、および、当社における標準的な復職後の配慮、つまり、期間は1か月間で、時間外労働なし、通院のための有給休暇の取得に際して、業務の申し送り免除の2点)に対して、特に付け加えるべき意見はなく、復職に支障はないと考えるとの意見が得られた。その後、さらに1週間後の、最終復職正式判定面接の日時を確認した。

■書類3.1主治医意見書

(2)復職面接

最終面接(11/4)には家族にも同席してもらい、復職の意思の再確認と、復職にあたっての最終確認を実施し、問題なく自信を表明したため、復職可を決定した。復職日に関しては、祝日がある前の週として、翌々週の水曜日にあたる11/16とした。(復職1週目は3日間勤務、2週目は4日間勤務、3週目は5日間のフル勤務、となる)。

4. 復職支援期

2週間に1回の通院の日を復職判定最終面接時点で確認してあったので、それ以外については通常通りの勤務とした。復職後は業務評価表を本人に書かせ、上司によるフィードバックを行った。一部業務にて、要求の8割程度の労務提供となった(既存営業先に対する連絡の行き違い、営業資料の準備に時間がかかった)が、適切に指導を行い、概ね問題ない状態が続いていた。1ヶ月の時間外労働制限後は、部署にて徐々に時間外労働を増やしてもらい、2ヶ月経過後には通常通りの勤務となった。
 勤怠が乱れることなく、私用による有給休暇取得も、事前に申請しているため問題なく、6ヶ月が経過した。現在も月一回の通院を続けながらも他の社員との遜色もなく、同様に勤務を継続している。

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