メンタルヘルス不調者対応のみならず、職場の健康管理全般において、この大原則は非常に重要です。
一見当たり前のことを言っているようですが、お悩みの事例を冷静に考え直してみると、この原則から外れた対応をしていないでしょうか。
職場は働く場所であって、治療の場所ではない
困った事例を振り返ってみると、職場が治療やリハビリの場所になっていないでしょうか。
具体的には、通常通り働くことができないけれど、働きながら徐々に良くなれば良いと安易に考えて、軽減勤務を認めていないでしょうか。
しかし精神疾患の治療は、専門の医師が、専門的な判断の基で適切な投薬も行い、場合によっては入院させて(=本人への負荷を0にする)、ようやく数ヶ月から数年単位で、寛解と増悪を繰り返しつつ徐々に良くなっていく、という非常に困難なものです。
それを、働きながら、投薬もせず、医学的には素人である上司や人事が、カウンセリングのような対応くらいを行うのみで良くしようというのは、相当難しいことです。そうした難しいことをしようとしていませんか。
職場では通常勤務することが前提である
職場は労働契約に基づいた完全な労務提供をする場です。よく、「来た日は仕事をしている」=仕事ができている、と考える人がいますが、それは間違いです。
より厳密に、ここで言う「通常勤務」とは、
- 業務が出来ている
業務効率・質・生産性に問題なく求められる水準を満たしている - 就業規則を守っている
就業態度や勤怠について、就業規則に違反することがない - 「健康上の問題」はないし、業務遂行(継続)によって「健康上の問題」は生じない
健康上の問題により就業に支障が出ることはないし、就業したことを理由として健康上の問題が悪化する可能性は、最小化されている
これらの状態が全て満たされていることを指します。来た日は仕事をしている、という状態は、来る日と来ない日があるということであって、それは就業規則あるいは労働契約を守っている状態とは言えません。