理論・解説

復帰後の再療養要件「ストップ要件」について

復帰後に原疾患の再増悪が懸念される場合に、安全配慮義務を正しく履行する観点から、復帰時にストップ要件と呼んでいる再療養要件を設定し、該当した場合は速やかに再療養とする運用をとっています。

ストップ要件の内容

復職後の任意の1ヶ月間に、原疾患に起因することが否定できない遅刻・早退・欠勤、および当日連絡による休暇取得の申し出や、あるいは、上司の通常の労務管理下での指揮命令が困難であると判断される事象が、合わせて3回以上あった場合は、速やかに再療養を命じます。

これがストップ要件の中身です。この内容を復帰時に本人および面接に同席いただいた家族にも確認し、これを約束できた後に、復帰を認めることにしています。

「任意の1カ月」とは?

「任意の」という表現がやや堅苦しいですが、本人の自由意思に任せる、という意味ではありません。例えば「任意の整数を~」といったように、数学等で用いる「任意」の意味です。要するに、「どんな選び方をした場合であっても・・・」、という意味合いです。例外なくと言い換えてもよいかもしれません。

つまり、1カ月はわかりやすく、暦日をイメージしていますが、m月n日~m+1月n-1日を1か月間としたときに、mとnの組み合わせの中で、3回以上ストップ要件に該当する事象があった場合には、再療養を命じるということです。

これは何を意図しているかというと、例えば「●月1日~末日の中で3回以上」とすると、ひと月の間に2回休んで、次の月になるまで我慢して、月初にすぐ休む、というケースを防ぐ(そういう事例は速やかに再療養とする)ということです。

発熱や腹痛、腰痛などの体調不良があった場合

「原疾患に起因することが否定できない」という定め方をしているのが肝です。仮にメンタルヘルス不調からの復帰であっても、メンタルヘルス不調の症状の中に、発熱や腹痛、腰痛などは含まれると考えてよいでしょう。

もちろん全く違うかもしれませんが、第一原則でいつも言っているように「病気や病名ではなく、通常勤務できているかどうかで判断する」わけですから、医学的な細かい話はいったん棚に置いておきましょう。体調不良により勤怠の乱れが発生している、しかもその症状が原疾患の再増悪を否定できない、という状況であれば、再療養を命じる、ということです。

なお、原疾患の再増悪に起因するかどうかは会社が判断することとなります。例えば天候不良による公共交通機関の大幅な遅延であるとか、交通事故による骨折とか、そういったものは例外として考えればよいでしょう。

実際の適用場面

1回目

速やかに本人・家族・上司・人事による面接を実施します。あくまで3回以上該当した場合は、かなり強く再療養を勧奨する、ということなので、1回目であっても再療養の要否は確認します

面接では、どのような事象が発生したのかを関係者全員で確認し、本人及び家族に、再療養するかあるいは就業継続するか(ただし問題は改善することが前提)、確認します。就業継続を選択した場合は、次に進みます。

2回目

1回目と同様に、速やかに本人・家族・上司・人事による面接を実施します。

面接では、次はどのような事象が発生したのかを関係者全員で確認し、1回目で確認した事象が改善されていない場合はその点も指摘します。そのうえで、会社としては再療養を勧めるが、本人及び家族としては、再療養するかあるいは就業継続するか判断してもらいます。

3回目

1回目、2回目と同様に、速やかに本人・家族・上司・人事による面接を実施します。

これまでの2回とは異なり、再療養を前提とした面接となります。特に復職時の約束事として、こうした場合は再療養しようという話をしていたわけですから、療養の説得をします。場合によっては産業医や保健師にも参加してもらって、療養の説得をしてもらってもよいでしょう。

事前の準備が極めて重要

上記の運用を考えた場合に、速やかに面接を実施することが重要です。
 これを「2~3日後に・・・」としてしまうと、結果的にその2~3日の間に次の事象が発生してしまって、初回の面接で3回目に想定していた、療養の強い説得をするということになります。本人や家族がこれでは納得しないのも仕方ないでしょう。

そのためには、面接シナリオを事前に準備しておいて、すぐに実施できるようにすること、そして復帰時に家族にも「すぐに面接をすることになるので、ご協力ください」という話をしておいて、速やかな開催に協力してもらうことが重要です。場合によっては「ご家族がすぐに来ていただけない場合は、会社の判断で(安全マージンを取った判断として)、その時点からいったん療養してもらいます」という説明をしておいてもよいでしょう。

復帰時には関係者全員が、もう大丈夫だと判断して復帰を認めています。そのため、再療養が必要となるような場面を想定したくないかもしれません。
 しかし、うまくいかない場合への備えとして準備をしておくことこそが、会社側の担当者には求められているといってよいでしょう。

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