復職名人では、従業員本人と対面で話をする際には、面接シナリオを事前に準備して、その場ではシナリオをただ読み上げる、という対応をお勧めしています。
詳しくはこちらの書籍をご覧いただければと思いますが、今回は最近特に感じているシナリオのメリットについて、ご説明したいと思います。
シナリオを事前に準備することのメリット
今この場に集中できる
面接シナリオは、事前に準備をして、関係者で読み合わせも行って修正したうえで、当日の面接に臨みます。そのため、これまでの対応を踏まえ、今後の対応方針を考えたうえで、今回の面接では何を伝え、どのような結論にするか、という頭を使う作業を、事前にしっかりと行うことができます。
裏を返せば、従来のようなその場しのぎの面談の場合、面談の場でこれらのことを考えながら、その場で本人の話を聞き、本人に説明をするという、相当難しいことをしようとしていたわけです。失敗しても仕方のないようなことを、そもそもしようとしていたと言っても良いでしょう(もちろんこうした対応を面談形式でできる、非常に優秀な方はいらっしゃるとは思いますが、みんなにできる話ではありません)。
時間をかけて、しっかりと丁寧に考えなければならないことは、事前に準備を終えておき、当日はシナリオに沿って説明をするだけにする。これにより面接の場そのものに集中することができ、余裕を持って対応できますし、当日の本人の反応や発言をしっかりと確認することが可能となります。
罪悪感・負担感の軽減
面接の場で、本人にとって耳に痛いことを伝えることは、多少なりとも罪悪感や負担感が生じるものです。ですが、それを伝えなければ、本人にとって「何も指摘されていないのだから、問題ないのだ」という認識を変えることはできません。
その際に、事前に面接シナリオで指摘内容を準備しておいて、当日は準備されたシナリオを淡々と読み上げる、というようにすることで、心理的な負担は大幅に軽減されます。イメージとしては、誰かから「こういう風に指摘しておいて」と言われた内容を、代弁している、という感じでしょうか。この誰か=過去の自分、あるいは関係者全員の総意ということです。
従来のような面談での対応を思い浮かべていただければわかると思いますが、相手にとって耳に痛いことを指摘する、というのは心理的にかなりハードルの高いことです。それよりも、相手にとって耳に痛いかもしれないが、準備したシナリオを読み上げる、というハードルの方がはるかに低いはずです。
当日の使い方
面接シナリオは、当日は手持ち資料として準備し、読み上げる、という使い方をします。決して、丸暗記をする必要もなければ、本人から隠す必要があるものでもありません。政治家の答弁資料のように、淡々と読み上げればよいですし、それがむしろ効果的なのです。
というのも、確かに気持ちがこもった対応にはならないかもしれませんが、一方で当該本人からすれば、「いい意味でも悪い意味でも、しっかり準備して臨んできているな」という印象を受けることになります。
よく考えてみれば、従来の対応は、お互いに何を確認するかも分からないまま面談が始まり、会社が言っていることはコロコロと変わり、人によって言っていることも少しずつ違い、最終的には自分の意見が求められてその通りになる、というように、あまりに準備不足な、しっかりとしてない対応だと言ってよいでしょう。もちろん自分の思い通りになりますから、本人から明確な反発は生じないかもしれませんが、一方で不信感を受けることは間違いありません。
それよりも、しっかりと説明する文章が準備されていて、みんなが同じメッセージを伝えてくる、という対応により、心の底から納得するわけではないと思いますが、会社の方針は会社の方針として飲み込むことにつながるのです。
シナリオの準備は、確かにそれなりに負担は発生するものです。しかしながら、それによって得られる負担の軽減(その中には心理的な負担も含まれます)は、思いのほか大きいものです。加えてシナリオの作成は、慣れてくればそれほど手間がかかるものでもありません。
ぜひ面接シナリオを準備して、面接を行ってみてください。