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先日仙台で行われました、自由集会の第二部質疑応答セッションの音源を公開します!当日いただいた質問に対して、回答しました。
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■議論の概要
- 産業医の中立性と独立性|弁護士が代理人や顧問として中立ではないことと比較し、産業医は労働者個人と会社の間で中立が求められるわけではない、との見解が出ている。むしろ、労働者集団の健康管理においては中立でなければならない。独立性については、経済的独立性が確保されていないと担保が難しいとの意見があった。企業が費用を負担する第三者委員会も、その中立性には微妙な側面がある。
- 産業医が一人で中立・独立の立場を取る危険性|産業医は労働者の代弁者でも会社の代弁者でもなく、企業の意向を理解しつつも目の前の労働者に厳しいことを言わなければならない場合に悩むのは当然である。中立性と独立性を守るには、契約破棄も辞さない態度が必要になる場合がある。大学にいることのメリットとして、中立性・独立性を意識して活動できることが挙げられた。
- メンタル不調者への対応|個人と集団というキーワードが重要である。個人に対しては、労働契約を満たして就業再開する意思があるなら止めないというスタンスも中立性・独立性の一環になりうる。しかし、科学物質管理などの場面では、産業医学的見地から企業の利益を損なう勧告も必要となり、労働者集団に対する中立性が求められる。
- 病識が欠如している職員への対応|就業規則に受診を命じる条文を追加することも可能だが、それだけでは不十分である。命令の合理性が必要であり、また命令しても本人の希望に沿った診断書が出てくるなど、問題が解決しないケースもある。重要なのは、病気の有無ではなく、勤務からの逸脱に焦点を当てた指導を行い、その結果として懲戒処分か療養かという選択肢を本人や家族に示すことである。家族の理解と協力が鍵となる。
- 就業規則の作成|かえって会社を縛り、柔軟な対応を難しくする可能性が指摘された。復帰基準などを作り込むと、その通りにやらなければならなくなり、運用が複雑になることがある。ハラスメントの懸念を払拭するには、事前に書面を作成し、それを読み上げる準備をすることが推奨された。
- シナリオを用いたコミュニケーション|相手の思うことを先んじて「決めつけているわけではない」と伝えるなど、丁寧にシナリオを作成することで、円滑な受診勧奨が可能になる。
- 休復職を繰り返す50代男性へのキーパーソン対応|家族の同席を強く推奨するが、身寄りがない場合は、親戚、友人、会社の先輩、労働組合委員長なども選択肢になりうる。個人情報保護の観点から、本人の同意が取れない場合でも、自傷他害の恐れがあれば例外規定を適用し、連絡を取るべきである。緊急連絡先の毎年更新も推奨された。前の配偶者や子供、叔父などがキーパーソンになる可能性も言及された。会社としては採用時に緊急連絡先を取得するが、プライバシーに属する離婚などの情報は積極的に把握できないため、防災訓練などの機会に緊急連絡先の確認・更新を行うことが有効である。
- メソッド導入に伴う人事負担の増加|「今まで労務管理をサボっていた人事」にとっては当然の負担であり、不健康な状態を是正する過程だと説明された。シナリオ作成は保健師が担い、人事は確認するだけで済むケースもある。メソッド導入で再休職が減り、現場の生産性が向上するなど、見合うだけのメリットがある。ルールを定める手間はかかるが、運用例を流用することで作業化が可能となり、結果的に人事の担当者個人の負担を軽減し、業務を分担できる。
- メソッド導入の効果(肌感覚)|再休職事例の確実な減少、難渋事例(口答え事例)のほぼゼロ化が挙げられた。職員への教育が行き届くようになり、産業医への問い合わせや主治医の診断書への不安が減る。業務マネジメントとしての復職・休職対応が可能になり、作業化によって精神的負担も分かち合えるようになる。
- 休職期間の延長や休職人数の増加への懸念|メソッド導入当初は伸びる要素があるが、これは手順に慣れていないためであり、慣れれば計画的に短期で復職に導ける。早期の療養導入を徹底すれば、結果的に休職期間は短縮され、人数も減る可能性がある。これまで療養期間が短すぎたのであれば、伸びるのが本来あるべき姿である。
- 週1報告の受領書における振り返り|再発防止を考えるのではなく、以前よりもしっかりと復帰準備をしてもらうことが重要である。メンタルダウンの再発防止は主治医に任せるべきであり、企業側が求めるのは「仕事の行き詰まりに関する振り返り」に限定すべきである。復帰準備で何をさせるかは本人に考えさせ、会社側は必要な修正を加える。
- 休職期間中の振り返りによる悪化|療養専念期と復帰準備期を明確に分けることで回避できる。療養専念期には生活リズムを整えることに専念させ、復帰準備期になってから仕事上の対策を考えさせるべきである。
- 受診指示に応じない社員への対応|安易な配置転換は「いじめ」や「ハラスメント」になりうるため避けるべきである。重要なのは、受診の可否ではなく、勤務上の問題(事例性)を指摘し、改善を求めることである。改善しない場合は懲戒処分も視野に入れつつ、本人や家族と粘り強く交渉する。無理やり休ませる措置ではなく、療養勧奨として強く促すスタンスが示された。
- 従業員の借金の有無確認|純然たるプライバシーであり、会社が安易に介入すべきではない。金銭問題が復職理由であっても、復帰基準を満たさない限り復職は認められない。金銭問題は療養中に解決しておくべき課題である。
- 休職中の寮からの退去および引っ越し費用|メソッドでは寮での療養は原則として防ぎ、実家への帰省を促すが、引っ越し費用まで企業が負担することはない。復職が決まった後にアパートを借りるなど、生活環境を整えることも復帰準備の一環である。
- 会社側の弁護士に期待する役割|面接シナリオや説明文書のリーガルチェック、ハラスメントにならない表現への助言である。弁護士は保守的な文書作成が得意であり、コンサルティング的な役割が期待される。産業保健法学会における弁護士の認知度はまだ低いが、今後ニーズの高まりとともに変化する可能性がある。
- ライン作業者がしゃがみ込むケース|貧血の診断があっても、業務上の支障があるかどうかが重要である。単にしゃがみ込むこと自体が問題なのであれば、「しゃがみ込むな」と指示し、安全上の問題点を説明して改善を求める。受診勧奨に応じなくても、業務上の問題が改善しない場合は、会社として対応する必要がある。
- 「仕事が要因で病状が悪化したため、同じ仕事に戻れば再発する」という主治医の意見|療養開始時にこの意見を想定した説明を組み込むことが有効である。アスリートの例を参考に、仕事が要因であれば、今度は仕事が要因とならないよう準備する必要があることを強調する。人間は変化に適応できる生物であるという視点も有用である。
- メソッド導入への会社の反発|上司が人材育成を普段から行っていると「思っている」にもかかわらず生じることがある。実際には人材育成や労務管理ができていないケースが多く、その不健全な状態をメソッド導入によって是正することへの抵抗がある。また、これまでの「魚を与えていた」関係から「魚の取り方を教える」関係への転換には、会社側の信頼関係や覚悟が求められる。
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