お知らせ

自治体向けパイロット事業のご報告

弊社では、2021年2月から7月に、自治体向けパイロット事業を実施しました。
 事業には7自治体に参加いただき、11事例について、手順と様式・面接シナリオによる支援を行いました。

自治体の人事担当者に限定して、パイロット事業の成果報告書(PDF)を配付いたします。
 報告書の配付をご希望の方は、下記フォームにてお申し込みください。自治体の人事担当者であることを確認した後に、メールにて報告書をお送りいたします。

パイロット事業概要報告

参加自治体が抱えている課題

パイロット事業参加自治体に対して、事業開始前に事前ヒアリングを行い、各自治体の課題を確認しました。それらをまとめると、各自治体に共通する次のような課題があることが分かりました。

  1. メンタルヘルス不調で休む職員の数や、療養と復職を繰り返す職員が増えている。
  2. 職場復帰を認めたものの、求められる業務が十分に遂行・担当できていないケースが発生している。その結果、サポートする他の職員へ過度な負担がかかっている。
  3. 主治医の復職可能である旨の診断書に対して、時期尚早な復職であると感じることがあっても、復職を認めざるを得ないことがある。
  4. 人事担当者の異動により、一貫した対応ができない。
  5. 長期(1年以上)に渡って療養している職員や、休職期間満了を間近に迎える職員がいるものの、どのように対応すれば良いか分からず、困っている。

課題の背景にある原因

パイロット事業で対応した各事例の経緯を確認すると、パイロット事業参加前に参加自治体が認識している課題の背景にある、いくつかの「原因」が明らかになりました。

 これらの原因を一言でまとめると、「従来型対応の問題点」とほぼ同義である言えます。そのため、これらの原因を解消していくためには、「従来型対応の問題点」を解消するために開発された、「新しい」対応方法である業務遂行レベルに基づくメンタルヘルス対応が有用であると考えます。

■原因①|療養や復帰準備が不十分な状態で、復帰を認めているから

メンタルヘルス不調は復職しても再発する割合が高いことが分かっています。そのため、再発により療養と復職を繰り返す事例の数を減らすことが、メンタルヘルス不調で休む職員数全体を減らすために有効な一つのアプローチであると考えられます。

では、なぜ療養と復職を繰り返す職員が増えているのか。それは療養や復帰準備が不十分な状態で、復帰を認めているからであると考えます。
 パイロット事業においても、復帰可能であるとの明確な判断を、事業者として行っておらず、明らかに復帰時期尚早にもかかわらず、本人の希望を尊重する形で、復職を認めたことで問題になった事例が複数ありました。

また、復帰後に求められる業務を遂行できない、担当できないことの理由も、原因①と同じく、療養や復帰準備が不十分な状態で、復帰を認めているからです。
 明らかに正式復職の時期が早いと思われる状況で復帰を許容しても、復帰後に10割の業務量が遂行できるようになることが期待できるでしょうか。

■原因②|復帰基準や復帰判断の考え方が自治体側ではっきりしていないから

時期尚早な復職を認めてしまう根本には、復職判断の判断材料を、主治医の診断書にのみ強く依拠している点に問題があります。これは、客観的な復帰基準や、復帰判断の際の考え方が、自治体側ではっきりしていないからです。言い換えると、事実上自治体側としては何らの判断をしておらず、主治医の診断書を追認しているだけになっているとも言えます。

■原因③|担当者個人の知識・経験・スキルに依存した対応をしているから

人事異動によるローテーションは、自治体の宿命です。パイロット事業は年度をまたいで行ったため、実際に一部自治体では人事異動により担当者が交替することもありました。

その際に、担当者個人の属人的な知識・経験・スキルに依存した対応をしていると、担当者の異動により一貫した対応を取ることができません。それどころか、担当者が替わることにより、対応そのものの水準が明らかに低下してしまうこともあります。

たとえば、ある時点では非常に優れた能力を持つ担当者により、問題の発生を抑えることができ、メンタルヘルス不調者対応に支障がない時期もあるかもしれません。しかし、その担当者の異動により、たちまち対応に支障をきたし、結果としてさまざまな問題が発生してしまいます。

■原因④|個々の(医学的)背景や事情に応じて、対応を考えているから

個々の事情に応じた対応を行っていると、事例の将来的な見通しを立てることが難しくなります。さらに、自治体担当者側の希望的観測により、対応を誤っていることもあります。
 例えば、就業中の事例で「しばらく様子を見ていれば、徐々に良くなると考えていた」という事例や、「所属や本人から特に連絡がなかったので、その後状況が改善し、通常勤務していると考えていた」というような事例が、結局は長期化するなどして、対応困難事例になってしまっているのです。

この課題の背景には、メンタルヘルス不調者に対しては個々の(医学的)背景や事情に応じて、対応を考えなければならない、という従来型対応の問題が潜んでいます。
 確かに疾病治療そのものについては、個別の対応が必要かもしれません。しかし、それはあくまで療養が中心となる場面における考え方です。療養期間が延びようと、休職期間満了を迎えようと、復帰基準は変わらないはずですし(低くなるわけではない)や復帰の手順そのものも変わりません。

また、復職後に業務を遂行・担当してもらう場面において、「医学的背景・事情があるから、業務はできなくても許される」という考え方は、少なくとも住民側から理解が得られるはずもありません。
 復職する以上、全体の奉仕者として適正な住民サービスの提供ができることが求められるのであって、個別の医学的背景・事情によって担当できない業務があるのであれば、療養を継続することが相当であることには間違いはないと言えるでしょう。

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