【質問】休職者が戻ってくることを元職場が拒否するケース

質問

上司・人事

休職者が戻ってくることを元職場が拒否するため、会社として復帰職時に異動させてしまう場合があります。元職場に対して、どのように原職復帰の原則を説明すれば良いでしょうか。

回答

原職復帰の原則を貫こうとすると、ご質問のように職場側から反発があることは少なくありません。しかしながら、仮に反発があっても、原職復帰の例外には当たらないため、原職復帰させます。

説明のポイント

原則論

正社員の職務無限定性の中には、誰とでも働く、という要素も含まれます。また日本の管理職には、人事権はほとんどないため、誰をその部署へ配置するかといった点について、本来異論を唱えることはできません。そのため、戻ってくることを拒否するという姿勢自体、あってはならないのです。

ある意味で、会社として労務管理が適切に行なわれているとは言えない状況にあることを示していると言えるでしょう。

ストップ要件の設定

ただ、そうは言っても、原則論だけ振りかざせば良いというわけではありません。職場の反応の背景には、復帰後に通常勤務ができずに、部署に負担が生じる恐れがある、という懸念があります。

そのため、復帰の際にはストップ要件を設定して、復帰後に通常勤務ができない状態にあれば、再療養に向けて人事も連携して速やかに対応するという姿勢を示しましょう。
 またこの経緯を所属にも理解してもらうために、所属長には復帰判定面接に同席してもらって、確認してもらうと良いでしょう。

元職場はなぜ拒否するのか

そもそも職場は、なぜ復帰してくることを拒否をするのでしょうか。その背景には、3つの要因があると考えられます。

療養開始前のフォローが大変だった

一つ目は、療養開始前の休職者のフォローが大変だったから、というものです。多くの方は、病気になった人に対して、優しく接してあげようと思っています(私たちも同じです)。しかしながら、その気持ちにも限度があります。療養開始前のフォローで相当な苦労をしたから、復帰後はフォローしたくないと思っていることもあるでしょう。
 この懸念に対しては、復帰の際には通常勤務ができることを前提としていること(=フォローは必要ないこと)、仮に通常勤務ができなければ、上述の通り速やかに再療養にすることを説明すれば、ある程度は払拭できるはずです。

また今後同じような事例を生まないために、低空飛行が続いている状態の方がいる場合、速やかに療養に向けて対応していきましょう。
 結果的に、従来は療養開始前に投入されていたフォローのための労力が、復帰後のフォロー(業務面というよりは、暖かく迎えてあげると言った心理的なフォロー)に向かうことにもなり、復帰する本人のためにもなります。

原則が徹底できていなかった

これまでも同じように部署が受け入れを拒否した場合、別の部署へ異動して復帰するケースがあったということもあるでしょう。要するに、原職復帰の原則を原則として運用できていなかったということです。

このような場合、過去に行なってきたことは変えようがないので、「今後はそのような対応は一切行なわない」ということを公表し、原則を徹底して維持しましょう。
 これまでと対応が変わることを懸念する人もいますし、それを批判する人もいますが、過ちがあればそれを認め、正しく対応するということは、職場だけでなく人として全くおかしな話ではありません。従来の対応(復職時の異動を広範に認める対応)でうまくいっていなかったのだから、新しい対応に切り替えるというだけのことです。

人事が職場に丸投げしていた

上記にも重なる部分もありますが、職場が困っているにも関わらず、人事が対応を丸投げしていて、職場と人事との信頼関係が構築できていないというケースもあります。

通常の従業員の育成等については、ある程度職場に委ねるという対応も必要でしょう。しかしながら、労務管理上の問題により職場が困っていたとしても、職場には裁量があまり委ねられていないのですから、丸投げしていてはいけません。
 人事が適切に関与して、しっかりと連携して対応しましょう。