第74回|メンタルヘルス不調者対応事例における弁護士の視点

復職名人が読む三手先
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第74回|メンタルヘルス不調者対応事例における弁護士の視点
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合宿で収録した音源の3本目です。今回は事例を題材とした弁護士の視点について、議論を深めました。

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■議論した内容

  • 事例:新卒・試用期間中の従業員がミスを連発し、勤怠も乱れて休職状態となり、主治医から「在宅勤務なら復職可」の診断書が出たケース
  • 会社が産業医面談を求めたところ、産業医からは「主治医の意見を踏まえると復職不可とは言えないが、会社で最終的に決めてほしい」という意見が出た。
  • このような事例に対し、弁護士間での議論では、産業医の意見が曖昧であることや、それに対する弁護士の期待(「もう一歩踏み込んで復職不可と言ってほしい」という期待)が語られている。
  • 産業医の意見が「会社で判断してほしい」というものであることに対し、産業医としては悪くないベターな対応だが、その意見の裏にある産業医の読み(結局復職させるだろうという見通し)や、会社が辞めさせるつもりであるならば、その意見は「辞めさせてもいいと言っているに等しい」と解釈されうる危険性が指摘された。
  • 弁護士がこのようなケースで産業医に意見を求めることの是非が議論された。
  • 弁護士の助言が「裁判の勝ち負け」を土俵として見ているため、解雇や退職後の紛争を想定し、証拠として信用性の高い産業医意見を得ようとする傾向がある。
  • 主治医の「在宅勤務なら復職可」という意見について、本来の労働契約における労務提供はできないと解釈できるにも関わらず、医師に直接言わせないと判断しない思考停止の状態になっている
  • 適切な対応としては、医者をあちこち引っ張り出す前に、会社が本人に直接、労働契約に沿った業務遂行が可能か確認するべきであり、必要であれば本人に主治医に確認してもらうように促すべきでは。
  • 主治医や産業医に意見を求める際の質問の仕方について、オープンクエスチョンではなく、医学的根拠の有無など質問を明確にして尋ねるべき
  • 親や家族を関与させるかについても議論され、弁護士は揉め事や個人情報保護の観点から消極的になりがちだが、早期に、かつ会社側から積極的に関与を求めることで、紛争化した場合でも会社側のプロセスへの理解を得やすくなるなどのメリットがある
  • 試し出勤(出社テスト)について
  • 弁護士の助言が曖昧で決定打に欠ける理由:最終的な裁量権が会社にあること、紛争化後(末路)の対応に特化していること、多様なケースの積み上げ経験が不足していること、クライアント(会社人事総務)の「やめさせたい」という本音を前提としていること
  • 会社の人事総務側の問題点:時間切れに弱いこと、決断力がないこと、裁判を恐れるあまり不適切な対応をしてしまうこと、労務管理の問題を病気の問題にすり替えてしまう傾向があること
  • 弁護士と産業医/顧問医のスタンスの違いとして、弁護士が短期決戦や紛争化後のリスク回避を重視しがちなのに対し、顧問医的な立場では長期戦や紛争にならないための早期対応(予防法務)を重視する傾向があるのでは
  • 問題がこじれる根源的な理由として、会社の人事総務が頼りないこと、問題発生の初期段階で適切な対応ができていないこと(後手後手であること)が最も問題である

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