理論・解説

就業規則|休職制度の位置づけ

就業規則の基本的な考え方

就業規則には、会社と労働者との間に締結される、「労働契約」としての側面があります。

まず、労働契約について簡単に説明すると、労働者は労務を提供する義務、会社は賃金を支払う義務を、それぞれが負った、契約です。

そして、具体的にそれぞれの義務である、労務を提供する、あるいは賃金を支払うには、もう少し詳しく詰めなくてはなりません。
 例えば、いつどこでどのような仕事をするのか、賃金はどのように計算するのか、いつ払うのかといった「条件」を決めなければなりません。
 そして、これらの条件を個別の労働契約で定めても良いのですが、多くの労働者がいる会社では、ある程度統一的なルールを定めることが効率的であり、同じ契約形態の労働者に共通するルールを、就業規則として定めています。

このような背景があるため、就業規則は、会社と労働者「集団」との約束という形式ではありますが、冒頭に述べた通り労働契約としての側面があるわけです。そして会社と労働者の契約ですから、就業規則に定めたことは、労働者はもちろん、会社も従わなければなりません。

休職制度の位置づけ

休職制度は福利厚生制度の一つ

続いて、休職規程ですが、これは法律で義務付けられる制度ではありません。

法律で義務付けられる制度には、例えば育児休業や介護休業などがあります。これらの制度とは異なり、制度の内容はもちろんのこと、そもそも制度を定めるかどうかさえ、会社の裁量に任されています。ある種の福利厚生制度の一つです。

休職制度がない場合にどうなるか

では、休職制度を定めていない会社において、私傷病により一定期間、療養する必要が生じた場合は、どうなるのでしょうか。

私傷病を理由として仕事をできないという状態は、労働契約に立ち戻って考えてみると、「労働者側の事情によって、完全な労務提供ができない状態」と言えます。
 つまり解釈としては、労働契約に基づく約束を守られていない状態であり、会社はその完全ではない労務提供を受領することもできるし、受領しないこともできるのです。(高尾メソッドでは安全配慮義務の拡大につながりかねないことから、不完全労務提供は受領しないことを推奨しています)。

このような労働契約上の約束が守られていない状況が長引けば、労働契約の解消を検討することになります。ですが、私傷病は会社側の事情によるものではないとはいえ、一方で、労働者の責とも言い難いもので、少しかわいそうな気がします。
 ここで休職制度を制定する意味が出てきます。つまり、一定期間回復を待つために、労働契約関係自体は存続させつつ、労務提供を免除または拒否する制度として、休職制度はあります。

そのため、一般的には休職制度は、解雇の猶予制度と考えられています。
 よく産業保健スタッフから「休職期間が満了したら、労働者はどうなるのか」という質問がありますが、猶予期間が過ぎても回復できないということなので、残念ながら契約は解消するほかないことになります。

休職は労働者の権利ではなく、会社が命じるもの

そして大事なことは、休職制度は労働者の権利として存在しているのではないという点です。
 そもそもは私傷病により労務提供が完全にできない状態にあり、その労務提供を受領するかどうかの判断は会社にゆだねられています。その意味もあって、休職は命じるものとして存在しています。

時々、下記のように休職を、労働者の権利のように記載している規則を目にします。

第○条 次の各号に該当する場合、以下に定める期間について、労働者は休職することができる。

そうではなく、次のように会社が命じるものであるということを、明記する方が良いでしょう。

第○条 次の各号に該当する場合、会社は当該労働者に対して、以下に定める期間内で、休職を命ずることがある。

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