理論・解説

安全配慮義務からみる、第二原則、第三原則

メンタルヘルス対応の三原則の二つ、第二原則と第三原則に従って、早期に療養させることは、安全配慮義務の履行においても重要です。

第二原則|通常勤務に支障があるのであれば療養させるしかない

安全配慮義務の考え方から第二原則をみると、通常勤務に支障があるとは、勤怠の乱れや業務遂行に問題があるということであり、すなわち予見可能性がある、と言えます。
 そして、予見可能性がある以上、結果回避義務が発生していると考えられるので、結果回避義務を確実に履行するためには、「療養させるしかない」ということになります。

第三原則|配慮付き通常勤務は極めて限定的に行う

通常勤務に支障があった時点で療養させると言っても、一般的に療養が必要であると考えられるタイミングよりも早いため、本人との共通認識が築けず、すぐには療養導入ができないかもしれません。そのため、第三原則で限定的に就業継続を認めることになります。

そのような観点から考えると、第三原則の適用条件が重要なことが、改めて分かってきます。

1.一時的(数週間)、有限回数(1回のみ)とすること

結果が起きた「後から」振り返ってみると、配慮が足りなかったと言わざるをえないような対応を続け、追加の配慮を続けた場合、「なぜこの時点で配慮が必要なことが分かっていたのに、不十分な配慮のもとで就業を継続させていたのか」と指摘しうる点が問題となります。

要するに、期間や回数をあらかじめ決めることなく、様子をみながら配慮を続けることは、それ自体が予見可能性を高め、結果回避義務の不履行の実績(場合によっては記録まで)を自ら作っているとさえ言えるでしょう。

そのため、一時的(数週間)、有限回数(1回のみ)で実施することが重要となるわけです。

2.「健康上の問題」が改善一方向であるという共通認識、3.主治医・産業医がドクターストップしないこと

健康上の問題が悪化しつつある、という認識のもと、あるいは医学的な保証が無い中で、就業継続を認めることは、安全配慮義務の拡大に繋がり、対応がより一層困難になります。

そのためこのような条件が必須となるわけです。

まとめると・・・

まずは第二原則に従い、通常勤務に支障がある時点で、基本的には療養が必要だという共通認識を形成します。

配慮付通常勤務にて少し様子を見るということであれば、第三原則を適用して、限定的に実施し、問題が解決しない、あるいは悪化するのであれば速やかに療養させる、という対応が必要であるということです。

就業に支障があると判断した場合は、とにかく療養に専念させるということこそが、安全配慮義務を履行するために、実務面でも重要となります。

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