事例紹介

【事例相談】メンタルヘルス不調による休職から復帰したものの、仕事ができない従業員

【相談内容】

人事・上司

うつ病から復帰したものの、いつまで経っても責任のある仕事を任せることが出来ない従業員がいます。調子が良さそうな時を見計らって職位相当の仕事をやってもらおうとしても、飲んでいる薬や病状の再増悪への懸念を理由に「できない」と言われます。上司から何度か指導を試みたのですが、「自分以外にも仕事ができない人間がいる」と言って、病気を理由に仕事をしない状況が続いています。

勤怠の乱れはないのですが、仕事の負荷をかけると休むことを恐れて、上司も対応できておらず、負荷は低い状態です。当然、周囲は不満を感じており、対処に苦慮しています。

【対応方針コメント】

このような事例対応は、この事例への対応と今後への教訓を分けて整理することをお勧めしています。

今後への教訓

まずそもそも、通常勤務ができるかわからない状態で、とりあえず復帰させて、様子をみながら徐々に負荷を上げていこう、という点に問題があります。もちろんそれでうまくいく事例もあるとは思いますが、今回の相談のようにうまくいかない事例があることを踏まえると、そうした対応は良いとは言えません。

また、「仕事をやってもらおう」という表現や、本人から「できない」と言われている点に表れていますが、仕事は本人を説得してやってもらうものではありません。職場は働く場所であり、従業員側は、あくまで労働契約に沿って、上司からの業務命令に従って業務をすることが求められるのです。平時では当たり前なこうした感覚も、療養の過程で失われてしまっているケースがあります。そのため復帰準備の中で、徐々に職場は働く場所である、という感覚を取り戻すようにする必要があります。

この事例への対応

事例対応の基本は、一旦休ませてから軌道修正する、というものです。
 この事例も基本通り、まずは一旦休ませてから、次の復職までの間に、通常勤務ができる状態まで復帰準備をさせること・職場は働く場所であるという感覚をもう一度持たせること、を目標に、取り組みを進めて行きましょう。

まずここから休ませる方法ですが、面接を実施し、現状は通常勤務ができているとは言えない状態で、会社として良いとは言えないと考えていると説明して、①現状を直ちに改善して今後は通常勤務をするか、②それとも直ちに改善することは病状が悪くてできないから、療養に専念するか、どちらかを選択させましょう。

多くの場合は①を選択しますので、その後は通常勤務を適切に命じて行きましょう。ここで「仕事の負荷をかけると休むことを恐れて、負荷をかけられない」という対応を取ってはいけません。本人が「通常勤務ができる」と主張しているのですから、会社としても通常勤務をさせましょう。
 これで通常勤務ができるようになれば、それで良いですが、そうならない場合や、従来よりも負荷が上がることで、今度は勤怠の乱れが生じてくることがあります。そうなった場合には、2回目の面接を実施します。この面接は家族にも同席してもらって、1回目と同じく、通常勤務をするか、療養に専念するか、2択で選択してもらいましょう。

次は、1回目の面接で本人が「通常勤務ができる」と言ったのに、できなかったわけですから、病状が増悪している懸念がありますので、通常勤務ができる旨の主治医意見の提出を求めます。
 問題が改善されるまで、こうした面接を繰り返し、徐々に療養するという選択肢のお勧め度合いを高めていけば、何回目かの面接で、本人あるいは家族から、療養をするという選択をするはずです。

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