理論・解説

休職期間満了までに復帰が難しそうだったら

事例対応をしていると、どうしても休職期間満了までに、復帰基準を満たせそうにない事例に遭遇します。

どうにか手を差し伸べて、復帰させてあげたくなる気持ちも分かるのですが、その気持ちは押さえて、制度に則った対応が求められます。

休職期間満了になったらどうなる

時々「休職期間が満了になったら、どうなるのですか?」という質問を、特に医療職の方から受けることがあります。

そもそも休職期間は、私傷病により労務提供ができないことに対して、本来は解雇となっても仕方ない状況ではあるが、一定期間それを猶予するという制度です。そのため、一定の猶予期間が経過してしまったら、解雇、あるいは契約終了となります。
(解雇の猶予制度であることの証左として、一般的な解雇事由の中に「心身の故障により労務提供が困難であるとき」と規定されていることが一般的です)

もちろん、休職制度の定め以上に、休職期間を延長することは会社の勝手ではありますが、一方で休職制度自体は会社と労働者の労働契約の一部であることを考えると、他の労働者との公平性という観点から、安易に柔軟な対応をすべきではありません。

参考就業規則―休職制度の位置づけ

判断のタイミングを前に持ってくる

対応において重要なポイントは、休職期間満了となるその日まで、復職するチャンスがあるわけではないという点です。

復職名人の対応では、療養期間を療養専念期・復帰準備期・復帰検討期の三段階に分けています。そして、療養専念期と復帰準備期はそれぞれ最低1ヵ月、復帰検討期は2週間かかります。そのため、スムーズに対応を進めることができたとしても、最低で2カ月半から3カ月程度の時間がかかります。

要するに何を言いたいかというと、例えば休職期間満了3カ月前の時点で、療養専念期の初期状態、具体的には療養・復帰準備状況報告書を記載免除状態で提出しているとか、休職期間満了2か月前の時点で、復帰準備を開始できていないという場合、休職期間満了までに復職することは事実上不可能である、と判断することとなります。

さらに現実的には、例えば休職期間が3年間あり、2年半療養専念期に留まっているような事例の場合、残り半年でこの手順をクリアすることは、現実的には難しいと考えざるを得ません(もちろん、クリアできればそれに越したことはありません)。

復職までのスケジュールを本人・家族と共有する

実際の対応において、療養期間が長期化してしまった事例では、「ここまでにこれができなかったら、復職は相当難しくなってくる」という見通しを、あらかじめ本人・家族と共有することを推奨しています。
 先ほどの例で言えば、2年半療養専念期に留まっているような事例の場合、例えば休職期間満了1年前とかの時点で、「このまま療養専念期が続いて、残り6カ月を切ってしまったら、復職は難しくなってくるかもしれません」という話をしておきます。

カギとなるのは、あらかじめこうした見通しをお伝えしておくという点です。要するに、将来のまだ現実にはなっていない話であれば、本人も家族も受け入れられる一方で、そうした話を一切せずに「○か月を切りましたので、もう復職はできません」というような通知をしてしまっては、受け入れられないということです。先に先に手を打っておいて、あらかじめ説明をしておくことが、対応においては重要です。

同じ話は休職期間満了の日付を伝えることにも当てはまります。対応においては、療養当初から事務的にすべての事例において、休職期間満了日を通知しておくことをお勧めしています。もちろん最初から満了日の話をすることに抵抗があるかもしれません。しかしながら、満了退職が現実的になったタイミングで満了日を通知することの方が、もっと苦渋の対応になるでしょう。そこで悩むくらいだったら、本人もただの事務連絡として受け入れやすいうちに、お伝えしてしまう方が良いでしょう。

最後まで対応から逃げない

休職期間満了を迎えてしまうような事例に対応するのは、主に心理面で労力がかかります。そのため、どうしてもきっかけを見つけては先延ばししたくなるのではないでしょうか。

ですがそうした事例こそ、家族を交えた面接を頻回に行うことが重要です。特に休職期間満了が迫ってくれば来るほど、会う頻度を増やしていきましょう。

逃げたくなる気持ちを抑えるためにも、先付で予定を組んでしまって、本人・家族にも通知しておくのも手でしょう。

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