理論・解説

復帰検討期の対応

最終的な復帰判定を行うための期間で、関係者全員の意見を確認して、復職の発令を行います。

この段階で一番重要なのは、主治医に対する復職可否の意見聴取の方法です。

『主治医意見書』の聴取について

主治医に対しては、一般的な自由様式の診断書ではなく、『主治医意見書』の様式を用いて、意見を聴取します。

この様式は、表面(ないしは別紙)に会社の定める復帰基準や職場で行いうる配慮について説明が書かれており、裏面で主治医の意見を聴取するようになっております。

キーポイントとしては、主治医には、定められた労働条件の下で「復職させてもよいか」、それとも「療養延長が望ましいか」をYESかNOかで質問することにあります。
 自由記述の診断書だと、想定していない配慮や、不必要な条件について記述されることがあります。しかし、本来労働条件に関わる事項は、本人と会社の二者間で合意した契約内容であり、主治医の判断により左右されるものではないはずです。

あくまで主治医に意見を問いたいことは、定めた条件で働かせることについて、ドクターストップするかどうか、という点のみです。

『主治医意見書』の様式で確認することで、この点に沿った意見を聴取することが可能となります。

復帰判定面接の実施

同様の様式で産業医にも意見を聴取し、最終的に復帰判定を行う、面接を実施します。

なお、主治医と産業医どちらから先に意見を聴取するかは、会社によって(もっと言えば、産業医の関与の仕方によって)変わってきて差し支えありません。
 平たく言えば、産業医が積極的に関与している事業所においては、主治医より先に意見を聴取したほうがうまく機能する場合が多く、その逆の場合においては、先に主治医の意見を聴取しておき、主治医意見を踏まえて産業医としての意見を確認する方が良い場合が多いようです。

復帰判定面接においては、改めて本人の復職意思を確認し、関係者“全員”が復職について不安(具体的に指摘しうる懸念事項)がないことを確認します。例えば、本人や家族がフルタイム勤務に不安を抱えていたり、上司が本人の発言内容から期待役割を果たしてもらえるかどうかに課題を感じたりした場合には、復職判定を保留し、復帰を延期します。

またこのタイミングで改めて、復帰後の配慮事項と、ストップ要件についても確認しておきましょう。

復帰後の配慮

復帰後の配慮内容は基本的には、

  • 復帰後1ヶ月間は残業なし(産業医学的配慮)
  • 2ヶ月目からは徐々に残業も命じる(上司による段階的配慮)
  • 3ヶ月目からは通常の労働者と同じ程度の時間外労働を命じる

と段階的な配慮を基本としています。

2ヶ月目が少しわかりにくいので補足すると、イメージとしては、新入社員と同じで、いきなり他の社員と同じ水準の残業を命じることはせず、まさにビジネス的な観点から、上司の裁量で徐々に時間外労働を命じるということです。

これに加えて、「通院への配慮」も1ヶ月間行います。具体的には通院時の有給休暇取得に際して、通常は労働者側の責務である業務申し送りの免除を行います(上司が代わりに行うとよい)。

ストップ要件

ストップ要件は具体的には、「復帰後、任意の1ヶ月において、遅刻・早退・欠勤・事前申請のない有給休暇『申請』などが3回あった場合は、再療養を命じる」という条件をお勧めしています。

これらは復職がうまくいったときではなく、残念ながらうまくいかなかったときに効力を発揮します。
 あらかじめ配慮内容やストップ要件を本人およびご家族に伝えておくことで、いざとなった時に初めて説明するよりも遥かにスムーズに、本人や家族の納得も得やすく、再療養を命じることができます。

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