理論・解説

日本型雇用と原職復帰の原則

前回は、日本型雇用の特殊性について整理しました。今回はそれを踏まえて、私たちが原職復帰の原則にこだわっている理由を説明したいと思います。

原職復帰の原則

復職名人におけるメンタルヘルス不調者対応では、復職時は原職復帰の原則としています。

例外は、元職場・元職位・元職務(=原職)が、ビジネス上の都合で無くなったときのみです。
 例えば、元の職場が部署の統廃合などでなくなった場合、元の職位が高いため空席のままにしておけない場合、元の職務がアウトソーシングなどにより亡くなった場合などを想定しています。

いかなる異動も認めてはいけないのか

このような説明をすると、部署の生産性やビジネス上の都合での異動も、ダメなのかという質問をよく受けます。

もちろん原職復帰の原則は、通常の人事権を行使する形での、異動を制約するものではありません。原職復帰は、あくまで、「主治医の意見」や「本人の希望」を理由とした「復帰時」の異動をしてはいけない、という話です。むしろ将来的な制約を生じさせないための、原職復帰なのです。

復職時に異動を認めてしまうと・・・

復職時に、病気への配慮として(本人の希望や主治医の診断書による)異動を認めた場合、異動当初はうまく行くかもしれません。しばらくうまく行くケースもあるでしょう。

しかしながら問題は、次の異動をどうするか、という点にあります。次の異動先も本人の希望を聞くのでしょうか。あるいは主治医に「この部署へ異動させても病状が悪くならないでしょうか」と確認するのでしょうか。

要するに、一度病気と配属を結び付けた以上、今後の異動にも制約が生じてしまう恐れがあるのです。

異動への制約は無限定性の否定

日本の正社員は、一般的には勤務地や職務内容が限定されていません(職務無限定性)。それゆえに、勤務地や職務内容等に限定のある、限定正社員よりも優遇されているのです。

そのため、仮に勤務地や職務内容に限定性が生じるのであれば、それに見合った処遇に契約条件を変更しなければ公平性が保てません。つまり、会社としても本人としても、無限定性を手放すという判断は、かなり重大、かつ慎重に行うべきものといえます。

こうした考えに基づき、無限定性の放棄、すなわち、以降の職務や勤務地の限定を、会社が是認したかと誤解されるような「復帰時の」異動は会社にとっても本人にとっても、安易に行うべきではないと考えています。

つまり、正社員の職務無限定性はデメリットもある反面、給与やその他処遇の相当の上昇と表裏一体の関係にあることを再認識する必要がある、ということです。

具体的な対応方法

そうはいっても、適正配置などの観点から異動させた方が良いという場合も当然あるでしょう。そういった場合にどうするかと言うと、無限定性を確認・確保したままかつ、復帰後一定期間経過したのちに、異動させれば良いということになります。

具体的には、復職時には一旦原職に復帰させて、元通りの業務に従事させます。
 そして、復帰後の産業医学的な配慮(推奨配慮は、1ヶ月間の時間外労働免除および通院配慮)が解除された後に、通常の社員と同じように、純粋に人事としての業務上の判断にもとづき異動させます。

つまり、元の業務を問題なく遂行できたという記録と実績を残すことで、今後の異動にも制約を設けない=無限定性を維持したまま、かつ、医師意見に左右されず、人事裁量で異動させたことになります。

ただし、当然のことながら、本人に対する嫌がらせ的な人事や、あるいは本人の希望を全面的に叶えるような人事をしてはいけません。公平感を確保するために、バランスの取れた相応の異動としましょう。

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